Japanische Klassiker mit Furigana
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ずいひつ しほんたいへいき
随筆 私本太平記
吉川 英治
Lesen Sie 随筆 私本太平記 (ずいひつ しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 56.947 Zeichen · 114 Bildschirme
その二十九
また雨が強くなってくる。三ノ宮の駅で川辺氏とお別れして、大阪へ急ぐ。途中、小事故のため芦屋警察の前で一時間ほど立ち往生する。雨、いよいよ昏く、四条畷もあきらめるほかなく、途中「桜井ノ駅」の跡をさがす。すでに日もどッぷりで暗い木立と水たまりのほか何ものもない。この夜、祇園の万亭で旧知の老妓や舞妓さんに会う。翌日は一力旧例の“大石さん祭り”でお蕎麦の接待があるよしだったが行かれなかった。午後乗車、帰京した。(三六・四・四)
その二十九
ここで一回を筆間茶話とする。正直すこしくたびれた。一ぷくしたい。
近ごろ歴史小説というものの見解がよく論争や話題になっているが、湊川の小説化、とくに正成の死を書くなどにあたってみると、予想以上な困難さにいろいろぶつかる。私も四六時中、うつつない机の思索が幾日かつづいた。けれどそんな苦吟は、読者にはかえって、肩のこったことだったかもわからない。
正成のさいご、また湊川合戦にかんする史料は、それはきりのないほど沢山なものはある。けれど諸書、判でおしたような旧説や見馴れた材料でしかない。
また、むかしから余りにも有名な“七生報国”のことばなども、これを史観、文学観、今日の眼からどうみるべきか。