Japanische Klassiker mit Furigana
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あるはいまつのどくはく
ある偃松の独白
中村 清太郎
Lesen Sie ある偃松の独白 (あるはいまつのどくはく) von 中村 清太郎 (なかむらせいたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 132.905 Zeichen · 262 Bildschirme
その強い眼光に見据えられて、私は弱い涙の眼をしばたたく。しかしこの巨大な一眼も、なぜか少しうるんでいるようにも思われた。
朝は晴れたが霜うすく、地は珍らしく柔かだった。「今日はやわらぎだ」と山男は喜んでいる。昼近く太陽は幾度か浮雲におおわれる。これは山男の語では「日もどり」であった。日輪が隠れて、もとへ戻ったように思われる――といった風な意味らしい。赤石は全容を現わしているが、空の藍はようやく一抹の灰濁をおびはじめ、明らかに天気は昏迷の徴を呈してきた。山男は、米が明日までぐらいになった……と報告する。もうこれまでかなァ――と嘆息がもれる。
昼すぎ、峠へ聖の姿を求めて登る。空はもうまったく灰鼠の一色になって、雪は輝きを失い、谷はかえって寒冷のさ蒼い気を、はなやかに噴いている。大きな枝だらけの倒木に馬乗りになって、聖を仰ぎつつ暫し渋る筆をとりつづけたが、一刻、雪の峯角に冷たい利刃のような閃めきが明滅するや、南の空が怪しい温か味を潮したかと見る間に、いつもより早く、重い夕暮がのしかかる。
夜も珍らしく曇って、もう赤石の姿も拝めない。山男が「朝の日もどり」