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Japanische Klassiker mit Furigana

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あるはいまつのどくはく

ある偃松の独白

中村 清太郎

Lesen Sie ある偃松の独白 (あるはいまつのどくはく) von 中村 清太郎 (なかむらせいたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 132.905 Zeichen · 262 Bildschirme

Aozora Bunko

しかし川はなかなか見えてこない。高い段丘の裾に、村屋が点々断続しているばかりだ。見渡す黒部川沖積地の稲田は、みずみずしい夏の朝日をいっぱいに浴びながら、この大山脈の「吹きおろし」に、涼しげにそよいでいる。ただし道はもとより爪先き上りだから、荷の重い車夫の背には、早くも汗がにじみ出ている。

樅の木の多い舟見の町を通り抜け、ひとたび愛本の村に入るにおよんで、初めて右手に黒部川が現われる。一面茫漠たる、花崗岩砂のきらめく河原は、ゆるやかな中高の弧を描いて、末広がりに双翼をひろげる。その真中を、どっぷりと藍け紫の水脈が、後ろから衝きやられるように逸やって、流れの末――古人の嘆じた「四十八箇瀬」は、はるか海沿いの光炎のうちへ……。身体じゅうが力でコブコブになるような気がして、かえって息を凝らしつつ、何か叫び出したい衝動にかられる。

黒部川のつりばしの挿図

すぐ間近かの愛本橋が、あの黒部峡流の、解放される出口にあたるのだ。ここで両山脈の最後の山脚は、峡流をいったん緊扼して、のち一挙に放散する。そこに、名所図会にありそうな古風な木橋、その袂の高い崖上に、似合いの休み茶屋があって、眼下に黒部川は、九分の透明に一分の名状しがたいくもりをおびたような、最後の深淵を作っている。