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Japanische Klassiker mit Furigana

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あるはいまつのどくはく

ある偃松の独白

中村 清太郎

Lesen Sie ある偃松の独白 (あるはいまつのどくはく) von 中村 清太郎 (なかむらせいたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 132.905 Zeichen · 262 Bildschirme

Aozora Bunko

層雲峡や天人峡の温泉がはなはだ俗化した今日、この素朴な山気あふるる温泉こそ、もっとも珍重すべきものだ。青嵐が渡り、月星を宿す、その野天風呂が私は大好きだ。後山の雲井ガ原で、エゾ松、トド松の梢越しに、愛別、永山の峰頭をあおぐ景色も秀逸で、ことに夕陽が印象深い。私は幾日かここに描き暮らして、羆の出る森の夜道を独りたどるのも苦にならなかった。ここで釣れるアメ鱒というのは、山女に似て姿も味もよく、石狩源流の岩魚と共に忘れがたい。

ここからユコマンペツ温泉への山路は、沼ノ平の水光連なる広大な高原、旭岳裾合谷の奇岩そばだつ幽邃な山谷をつらぬいて、姿見の池畔に出る趣深いもので、秋を告げる黒マメの木の紫果が、疲れた身に甘く染みた。羆の跡は到る処なまなましく、それでも遠くから姿を見たい、という私の願いはついにむなしかった。旭岳は山腹から轟音を響かせて硫気を噴出している。ユコマンペツに下る途上の天女ヶ原、その疎林を通して十勝岳の眺めも美しい。そして私がユコマンペツから松山温泉に下る頃は、もう八月も終ろうとして、途中の瓢箪池畔では、はやくも峰楓とナナカマドの初もみぢに、そぞろ長旅が顧みられた。