Japanische Klassiker mit Furigana
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あるはいまつのどくはく
ある偃松の独白
中村 清太郎
Lesen Sie ある偃松の独白 (あるはいまつのどくはく) von 中村 清太郎 (なかむらせいたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 132.905 Zeichen · 262 Bildschirme
というのを指摘してもらった。しかし矢口君の言う通り、どうもそれは馬とは受け取れぬもので、いろいろ想像を働かせてみても、何か動物の形らしくはあるが、馬とは申しかねる……間違いではないかと迷った。後に思えば、それは尾と胴体や脚の一部が現われただけで、頸から頭はまだ出ていなかったのだ。いわばそれは未完成の画馬の断片で、そこから天工の意匠を洞察できなかったのは、不覚ながら、一つは前述の瘠せ馬の先入観が働いて、そんな雄大な立派な馬を想い描き得なかったためだろう。その日は、どうひいき目にも、馬とは見えぬ雪の中の山肌を、思いきりわるく見返りながら、うかぬ心を抱いて森上へ戻った。そして写生帖やメモ、地図などを前に、あれこれと思いわずらったことだ。
数日後雨あがりの快晴に、また四谷に出かけた、もう六月に入っている。松川の畔から見やる碧空の中の雪峯群は、クッキリと浮き出し、先日来問題の馬は……あら不思議、見ちがえるほど面目を新たにして、いつかまぎれもない馬と化していたのだ。実に雄大奔放な天馬である。これほどの構図になろうとは、まったく想像の外だった。私は幾度か眼を拭って見直した。