Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あるはいまつのどくはく

ある偃松の独白

中村 清太郎

Lesen Sie ある偃松の独白 (あるはいまつのどくはく) von 中村 清太郎 (なかむらせいたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 132.905 Zeichen · 262 Bildschirme

Aozora Bunko

風雨になると恐ろしい。おのずとみ出るような、なにか薄膜を無数に重ね合せたふうな雲が、風に追われて後から後から、大空に堆積し、山にのしかかった果ては、雨になる。素早く薪を手近かに寄せ集めて、簔虫流に巣にひそむ。疎らな、半ば氷結したみぞれ状の大粒が、音を立てて落ちるのを手始めとして、たちまちのうちに上下四方、ただ真白になってしまう。落下する雨滴は、風に鞭うたれて、もちろん勢いの激しいところへ、それを受けとめる地盤といえば、岩石はもとより雪や草木すら、何から何まで堅硬強靱な物ばかりだから、一気にそれを弾きかえす。雨滴は微塵に粉砕されて、煙霧となって舞い狂うのだ。一種の冴えた響と光りをもつ声が、そこから起って、ビンビンと波動から波動を拍ち合わす。

風はまず大蓮華の峯脈の稜線にからんで、遠く底ひびきのする、籠り気味の、沸きたつふうな声をあげる。まもなく朝日岳と覚しき岩壁に当ると見えて、ひっこするような、裂けるような、又割れるような、荒らけてつの目立った叫びを放つや、つづいて物を、一挙に洗い去るか、大きな平ら手ではたきつけるかと思う急迫音が、どっと耳もとをかすめて――はるか黒部の谷間の方へと消えてゆく……。