Japanische Klassiker mit Furigana
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あるはいまつのどくはく
ある偃松の独白
中村 清太郎
Lesen Sie ある偃松の独白 (あるはいまつのどくはく) von 中村 清太郎 (なかむらせいたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 132.905 Zeichen · 262 Bildschirme
親指の腹に分布した末梢神経が、その立場の安全なりや否や、すなわち全身の重量を――この高い絶崖と遙か下方の急瀬深潭との中空において――托するに足るかどうか、を弁別し、次に進んでその全重量を支え、さらに続いて移るべき次の立場を探り求める……眼を思うように使えるほど、首の角度は、自由にならないから。ここにいたって、親指の腹は赤裸なるをもってよしとする。足袋の底でさえ、隔てられているのは、それこそ不安で心持ちがわるい、また実際に危険だ。幸いなことに、私の足袋の底もすり切れていた。手は補助にすぎぬ、取りすがるほどのものも無いのだ。助七にも直接手は貸してもらえない。彼の足代ろを引継ぐ外は、自分の左足の親指一本が頼りだった。彼等の足というのが又、いかにもこうした動作に適した風に出来上っている。私も宿に帰ってから、やはり親指が、山人風を学んで、急に変形発達したらしい形跡を認めた。――すなわち指の横幅が広くなり、屈伸の角度も増して、虫類の吸盤さながら、物に吸い着くような利便を与える……
「黒部谷底(折尾にて)」のキャプション付きの挿図
黒部谷底(折尾にて)
私は、その時は神経の集中と緊張で、恐怖はさほど感じなかったが、後になって見て、よくも無事にすんだと思う。