Japanische Klassiker mit Furigana
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あるはいまつのどくはく
ある偃松の独白
中村 清太郎
Lesen Sie ある偃松の独白 (あるはいまつのどくはく) von 中村 清太郎 (なかむらせいたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 132.905 Zeichen · 262 Bildschirme
杖一本の身軽で、助七と二人、仙人ノ湯をこころざす。大窓の小屋から、雪渓の固い冷たい波を、一足一足拾って登って行けば、立ち迷う狭霧の奥から、めぼそ(ぜにとり)がしきりに鳴く、駒鳥もひと声ふた声叫ぶ。みな清らかに、ひらめく声だ、そして妙に寂びしい声だ。雪渓の果ての馬の背を乗り越えると、眼下に池ノ平が横たわる。
あたり一面の雪田からしぼれた水であろう、大小、七、八つの池が、やさしい形にたたえて、若やかな草間に、そっと置かれてある。その古鏡のようなおもては、山霧をうつして、月を思わす白光に、もの静かに照っている。驚いたことには、その一つの岸辺に、地ならしした所があって、助七の話では、ここに鉱山の飯場が建つのだという。どう考えても似合わない、何となく、建ちそうもない気がするけれど、又思い切ったことをやる人たちだ。この水を使うのだな、ここらも汚なくしてしまうのだろうな――念を押すように、そんなことを呟くと、助七はかえって、腑に落ちぬ――と言いたげな顔をした。近寄ってみれば、水はさほどきれいでもない。岸辺には藻が茂って、箱根山椒魚が泳ぎ廻っている。それにも、知らない運命が気の毒でならなかった。