Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あるはいまつのどくはく

ある偃松の独白

中村 清太郎

Lesen Sie ある偃松の独白 (あるはいまつのどくはく) von 中村 清太郎 (なかむらせいたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 132.905 Zeichen · 262 Bildschirme

Aozora Bunko

そして、これら自然の動揺変化につれて、浴客もまた変動する。一時のざわめきは、いつの間にか止んで、大分静かになった九月の浴湯を楽しんでいるのは、富山あたりの町かたの、冨裕らしい家族連れの湯治客など、それも幾組か数えるほどにすぎない。とじ糸も新らしい、ふくよかな丹前の色が眼につく。山林巡視の役人連中も、長い山暮しの帰り途らしく、隣室で、とってきた蝮を火鉢であぶりながら、酒盛りなど始めるのもある。高声で笑い興じているかと思うと、妙にしんみりした調子になる……

――僕なんか、もう古くてだめだよ、若い人がどんどん出てくるからなァ……

――そんな事はありません……

――そういえば、君などもまだお若いようだが、ずいぶん廻りくどい学問を、されたものですナ、惜しいものだ……

――……どうも好きだったものですから……

息苦しい気持ちで、部屋から戸外へ逃れるように出てみると、真黒な山影は星空を押しせばめて、限りも知らず、重々しく横わっている。巨大な渓声は、どうどうと小止みもなく、永劫の響きを伝えてくる。そして四辺一めんの涼しい虫の声々が、それに磨きをかけるように、やさしい伴奏をつとめている。