Japanische Klassiker mit Furigana
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あるおとこのだらく
ある男の堕落
伊藤 野枝
Lesen Sie ある男の堕落 (あるおとこのだらく) von 伊藤 野枝 (いとうのえ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.585 Zeichen · 27 Bildschirme
八
その経済状態はみんなによくわかっていました。茶の間の茶だんすのひき出しに、いつも、ありがねが入れてありました。みんな、誰でも必要な小づかいはそこから勝手にとることになっていました。が、私共の仲間では、誰も、一銭も無駄な金をそこから持ち出す人はありませんでした。
私は、子供をひかえておりますし、余計な金も使いますので、小づかいはまったく別にして自分で持っていました。それも時々ひまをさいて書く原稿料や、印税の一部分や、知人達の補足でようよう足りてゆくような状態でした。
Yは、この経済状態の上に、最も露骨に私への反感を示して、自分の煙草代から小遣いのすべてを、一銭もその共同の会計からは取らずに、乏しい私の財布のみを常にねらうのでした。私はその頃はもう、彼のその反感を充分に知っていましたので、いつも黙って出しました。彼にいわせれば、私共の処にはいる原稿料や印税は、何の労力も払わない金なのでした。で、彼は平気で強奪してもかまわないのだといっていました。私共がどれほど骨を折って物を書いているかなどという事は、彼の考慮の中にはいらないのでした。
八
私に対する反感が露骨になってきた頃から、彼はまた同志に対しても、以前の無遠慮をとり返してきました。