Japanische Klassiker mit Furigana
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かげろうのにっき
かげろうの日記
堀 辰雄
Lesen Sie かげろうの日記 (かげろうのにっき) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 30.890 Zeichen · 60 Bildschirme
その一
なほ物はかなきを思へば、あるかなきかの心地する
かげろふの日記といふべし。
蜻蛉日記
その一
半生も既に過ぎてしまって、もはやこの世に何んのなす事もなく生きながらえている自分だが、――一たい顔かたちだって人並でないし、これと云った才能もあるわけではないのだから、こんな風にはかない暮しをしているのも尤もの事だとは思うものの、只こうやってぼんやりと明し暮しているがままに、世の中に多い物語などをおりおり取り上げて、その端などを読んで見ると、ずいぶん有り触れた空言さえ書いてあるようだから、自分の並々ならぬ身の上を日記につけて見たら、そんなものよりも反って珍らしがってくれる人もあるかも知れない。それにまた、世間の人々が、私のようにこんなに不為合せになったのは、あまりにも女として思い上っていたためであろうかどうか、その例にもするが好いと思うのだ。
何分にももうすべて一昔も前の事なので、さて、何から書き出したら好いのだろうか知ら。まあ、それ以前の取るに足らない程の、好き事なんぞは、それはそれとして、――今からもう十何年か前の、そう、たしか夏の初めだったと思う、その頃はまだ柏木と呼ばれていたあの方が始めて私に御文をよこされたのである。