Japanische Klassiker mit Furigana
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かげろうのにっき
かげろうの日記
堀 辰雄
Lesen Sie かげろうの日記 (かげろうのにっき) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 30.890 Zeichen · 60 Bildschirme
が、そのままいつにない怨み顔をなされて出て往かれてしまった。あの子ははいって来るなり、私の前でしくしく泣いている。「どうしたの」と尋ねて見ても返事もせずにいた。あの方にきっとおれはもう来ないぞ、とでも言われたのだろうと思って、それ以上尋ねるのは止めて、いろいろ慰めたり賺したりしていたが、それから何日たっても、あの方からは音信さえもなかった。「まさかと思っていたのに、本当にこのままお絶えなさる気なのかしらん」と不安そうに思いながら、それでもまだそれを半ば疑うような気もちで暮らしていると、或日の事、こないだあの方の出て往かれる時に鬢をお洗いになった坏の水がそっくりそのままになっているのにふと気がついた。よく見ると、その水の上にはもう一面に塵が溜まっていた。「まあ、こんなになるまで――」と私は胸をしめつけられるような心もちで、それに何時までもじっと見入っていた。――そんな事さえも、その日頃にはとかく有りがちなのであった。
そういう一方に、あの坊の小路の女のところでは子供が生れるとか言って大騒ぎをしていたらしかったが、その頃からどう云うものか、あの方はあんまりその女のもとへはお出にならなくなったとか云う噂だった。