Japanische Klassiker mit Furigana
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かげろうのにっき
かげろうの日記
堀 辰雄
Lesen Sie かげろうの日記 (かげろうのにっき) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 30.890 Zeichen · 60 Bildschirme
うとも構わずにいた。それが善いにせよ、悪いにせよ、こう云うような私をそっくりそのまま受け入れてくれるのは父ばかりだと思えたが、この頃は京にいらっしゃらないので、田舎の方へすぐ便りを出して置いたところ、このほどその父から「そうして居るのも好いと思う。なるべく目立たぬように、暫くでもそうやってお勤をしている分には、気も安まるだろうから」などと書いておよこしになった。父にだって今の私の苦しい気もちは殆ど御わかりになって居そうにも見えないながら、それなりにもそう父のように仰ゃって下さるのが一番私には頼りになるのだ。それにしても、私がこうして居るところをこの間御覧なすって帰られたぎり、まだ一度も御消息さえおよこしにならないなんて、まあ、あの方は一体私がどんなになったならば、私の事をもお顧みになって下さるのだろうか。そう思うにつけ、私はこれよりももっと深く山に入るような事があろうたって、どうして里へなんぞ下りるものかと、ますます思いつめて往く一方だった。
或朝、道綱に無理に「魚でも召し上って入らっしゃい」と言いつけて、京へ立たせてやった。が夕方近くなって、もうあの子も帰ってくるだろうと思っていた時分、俄かに空が暗くなり、つめたい風が吹きはじめたかと思うと、あたりの木々の葉がさあっと無気味にざわめき出した。