Japanische Klassiker mit Furigana
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こころ
こころ
Lesen Sie こころ von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.915 Zeichen · 322 Bildschirme
十五
「一体家の財産はどうなってるんだろう」
「おれは知らない。お父さんはまだ何ともいわないから。しかし財産っていったところで金としては高の知れたものだろう」
母はまた母で先生の返事の来るのを苦にしていた。
「まだ手紙は来ないかい」と私を責めた。
十五
「先生先生というのは一体誰の事だい」と兄が聞いた。
「こないだ話したじゃないか」と私は答えた。私は自分で質問をしておきながら、すぐ他の説明を忘れてしまう兄に対して不快の念を起した。
「聞いた事は聞いたけれども」
兄は必竟聞いても解らないというのであった。私から見ればなにも無理に先生を兄に理解してもらう必要はなかった。けれども腹は立った。また例の兄らしい所が出て来たと思った。
先生先生と私が尊敬する以上、その人は必ず著名の士でなくてはならないように兄は考えていた。少なくとも大学の教授ぐらいだろうと推察していた。名もない人、何もしていない人、それがどこに価値をもっているだろう。兄の腹はこの点において、父と全く同じものであった。けれども父が何もできないから遊んでいるのだと速断するのに引きかえて、兄は何かやれる能力があるのに、ぶらぶらしているのは詰らん人間に限るといった風の口吻を洩らした。