Japanische Klassiker mit Furigana
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こころ
こころ
Lesen Sie こころ von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.915 Zeichen · 322 Bildschirme
三十八
三十八
「私が家へはいると間もなく俥の音が聞こえました。今のように護謨輪のない時分でしたから、がらがらいう厭な響きがかなりの距離でも耳に立つのです。車はやがて門前で留まりました。
私が夕飯に呼び出されたのは、それから三十分ばかり経った後の事でしたが、まだ奥さんとお嬢さんの晴着が脱ぎ棄てられたまま、次の室を乱雑に彩っていました。二人は遅くなると私たちに済まないというので、飯の支度に間に合うように、急いで帰って来たのだそうです。しかし奥さんの親切はKと私とに取ってほとんど無効も同じ事でした。私は食卓に坐りながら、言葉を惜しがる人のように、素気ない挨拶ばかりしていました。Kは私よりもなお寡言でした。たまに親子連で外出した女二人の気分が、また平生よりは勝れて晴れやかだったので、我々の態度はなおの事眼に付きます。奥さんは私にどうかしたのかと聞きました。私は少し心持が悪いと答えました。実際私は心持が悪かったのです。すると今度はお嬢さんがKに同じ問いを掛けました。Kは私のように心持が悪いとは答えません。ただ口が利きたくないからだといいました。お嬢さんはなぜ口が利きたくないのかと追窮しました。