Japanische Klassiker mit Furigana
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こころ
こころ
Lesen Sie こころ von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.915 Zeichen · 322 Bildschirme
三十六
玄関と門の間にあるこんもりした木犀の一株が、私の行手を塞ぐように、夜陰のうちに枝を張っていた。私は二、三歩動き出しながら、黒ずんだ葉に被われているその梢を見て、来たるべき秋の花と香を想い浮べた。私は先生の宅とこの木犀とを、以前から心のうちで、離す事のできないもののように、いっしょに記憶していた。私が偶然その樹の前に立って、再びこの宅の玄関を跨ぐべき次の秋に思いを馳せた時、今まで格子の間から射していた玄関の電燈がふっと消えた。先生夫婦はそれぎり奥へはいったらしかった。私は一人暗い表へ出た。
私はすぐ下宿へは戻らなかった。国へ帰る前に調える買物もあったし、ご馳走を詰めた胃袋にくつろぎを与える必要もあったので、ただ賑やかな町の方へ歩いて行った。町はまだ宵の口であった。用事もなさそうな男女がぞろぞろ動く中に、私は今日私といっしょに卒業したなにがしに会った。彼は私を無理やりにある酒場へ連れ込んだ。私はそこで麦酒の泡のような彼の気を聞かされた。私の下宿へ帰ったのは十二時過ぎであった。
三十六
私はその翌日も暑さを冒して、頼まれものを買い集めて歩いた。手紙で注文を受けた時は何でもないように考えていたのが、いざとなると大変臆劫に感ぜられた。