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Japanische Klassiker mit Furigana

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あじさい

たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集

佐藤 春夫

Lesen Sie たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集 (あじさい) von 佐藤 春夫 (さとうはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 41.277 Zeichen · 84 Bildschirme

Aozora Bunko

お前ももういいかげんにあきらめてわしをゆるしてくれ」

「でも山登りを云いつけて三郎まで死なせておしまいなさらないでもよろしかったのですわね」

と申しましたとたん、耳もとに三郎の声がして、

「お母さん、それはちがいます。僕はお父さんの云いつけで山へ登ったのではありません。自分で山へ登って見たくなって居たのです。それから敗戦といっしょに誰ひとりお父さんの権威を認める人もなくなったせいか、お父さんはまるで虚脱した人のようになりました。あれではお父さんもさびしすぎる。僕は自分の父をもっとむかしの父のような威力のある人にしたかったのです。せめては僕ひとりでもお父さんの言葉を尊重したいと思ったからです。孝行というのではありますまい。男同士の友情と同情だと、僕は思って居ます」

とそう云って、見れば、その時、三郎の顔がはじめてはっきりとわたくしの眼にも見えました。三郎はいつまでも幼がおの残っている顔で、そんな理窟を云う時など、かえって子供っぽいぼんやりと思いつめたあどけない表情になるような気がしていましたが、その時見えたのもその顔でした。

三郎の言葉を聞き、その顔が見え出した時からわたくしは、かなしいのやら、うれしいのやら涙がながれはじめて、とめどもないのです。