Japanische Klassiker mit Furigana
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あわもりものがたり
『たぬき汁』以後
佐藤 垢石
Lesen Sie 『たぬき汁』以後 (あわもりものがたり) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 118.470 Zeichen · 244 Bildschirme
魔味洗心
二、三日前、隣村の嘉平老が、利根川で蜂鱒を拾った。鱒を拾うというのは妙な話であるが利根川では珍しいことではない。
蜂鱒というのは、蜂を食って眼をまわした鱒をいうのである。一体、鱒科の魚は飛んでいる羽虫が大好物であって、利根川の鱒もこの類であるから、蝶でも虻でも蜻蛉でもかげろうでもおよそ水面に近い空間を飛んでいる虫を見れば水中から躍りだして、一気にそれを、ぱくりと食ってしまう。
蜻蛉や虻であるならば鱒の腹へ入ると、すぐ死んでしまうであろうけれど、もしそれが蜂であった場合には、簡単にはすまない。そしてそれが熊蜂であったなら、鱒の奴、ひどい目にあうのだ。
胃袋へ嚥み下したところで足長蜂や蜜蜂であったなら、間もなく往生しようが、大きな熊蜂であると、軽くは死なぬ。胃袋のなかで盛んに暴れ回りながら、あの鋭いそして猛毒を含んだ針で滅多矢鱈に胃袋を刺すから、いかに大きな鱒でも堪ったものではないのである。
忽ち、全身に毒が回って神経が麻痺し、失神状態となり、波に浮きながら上流から下流へ、ふわりふわり流れてきたり、水際へ打ち寄せられてきたところを、人間に拾われる次第になるのであろう。