Japanische Klassiker mit Furigana
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つゆのあとさき
つゆのあとさき
永井 荷風
Lesen Sie つゆのあとさき von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.725 Zeichen · 148 Bildschirme
「君江さんでしょう。」と誰やらの返事に君江は雑巾を植木鉢の土の上に投付けて「はアい。」と言いながら、新来のお客の方へと小走りにかけて行った。
客は二人とも髭を生した五十前後の紳士で、松屋か三越あたりの帰りらしく、買物の紙包を携え、紅茶を命じたまま女給には見向きもせず、何やら真面目らしい用談をしはじめたので、君江はかえってそれをよい事に、ひまな女たちの寄集っている壁際のボックスに腰をかけた。テーブルの上には屑羊羹に塩煎餅、南京豆などが、袋のまま、新聞や雑誌と共に散らかし放題、散らかしてあるのを、女たちは手先の動くがまま摘んでは口の中へと投げ入れているばかり。活動写真の評判や朋輩同士の噂にも毎日の事でもう飽きている。睡気がさしてもさすがここでは居睡りをするわけにも行かないらしく、いずれも所業なげに唯時間のたつのを待っているという様子。その時隅の方でひとり雑誌の写真ばかり繰りひろげて見ていた女が、突然、
「アラ、実にシャンねえ。清岡先生の奥様よ。」という声に、ボックスに休んでいた女は一斉に顔を差出した。君江も屑羊羹を頬張りながら少し及腰になって、
「どれさ。