Japanische Klassiker mit Furigana
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つゆのあとさき
つゆのあとさき
永井 荷風
Lesen Sie つゆのあとさき von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.725 Zeichen · 148 Bildschirme
恨まれるのはいやだからな。」
君江は噴き出したくなるのを耐えて、「ですからさ。もしも、万一の事があったらッて言うのよ。知れると面倒だから、今夜の事は誰にも絶対に秘密よ。」
「そんな事は心配しないだって大丈夫だよ。まさかの時にはきっと僕が引受ける。」と矢田はまず今夜だけはいよいよ自分のものになった嬉しさ。人通のない堀端を幸に、いきなり抱き寄せて女の頬に接吻した。
本村町の電車停留場はいつか通過ぎて、高力松が枝を伸している阪の下まで来た。市ヶ谷駅の停車場と八幡前の交番との灯が見える。
「あすこの交番はうるさいのよ。すこしおそくなると、いろいろな事を聞くから、車に乗りましょう。」
矢田はこの機逸すべからずと、あたりを見廻したが、折悪しく円タクが通らないので、二人はそのまま立止った。
「わたしの家はすぐ其処の横町だわ。角に薬屋があるでしょう。宵の中には屋根の上に仁丹の広告がついているからすぐにわかるわ。わたしこの荷物を置いて来るから待っててヨ。」
「おい。君さん。大丈夫か。すっぽかしはあやまるぜ。」
「そんな卑怯な真似しやしないわヨ。心配なら一緒にそこまでいらっしゃいよ。