Japanische Klassiker mit Furigana
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つゆのあとさき
つゆのあとさき
永井 荷風
Lesen Sie つゆのあとさき von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.725 Zeichen · 148 Bildschirme
わたしが帰らないと、いつまでも下のおばさんが鍵をかけずに置くから。」
高力松の下から五、六軒先の横町を曲ると、今までひろびろしていた堀端の眺望から俄に変る道幅の狭さに、鼻のつかえるような気がするばかりか、両側ともに屋並の揃わない小家つづき、その間には潜門や生垣や建仁寺垣なども交っているが、いずれも破れたり枯れたりしているので、あたりは一層いぶせく貧し気に見える。君江は軒先に魚屋の看板を出した家の前まで来て、「ここで待っていらっしゃい。」と言いすて、魚屋の軒下から路地へ這入った。矢田はすぐにその後について行こうとしたが、君江の感情を害しはせぬかと遠慮して、暫く首をのばして真暗な路地の中をのぞくと、がたりがたりといかにも具合のわるそうな潜戸の音がしたので、いくらか安心はしたものの、どうも、様子が見届けたくてならぬところから、一歩二歩とだんだん路地の中へ進み入ると、忽ち雨だれか何かの泥濘へぐっすり片足を踏み込み、驚いて立戻り、魚屋の軒燈をたよりに半靴のどろを砂利と溝板へなすりつけている。間もなく、君江は出て来て、
「アラ、どうしたの。」
「イヤ、ひどい道だ。