Japanische Klassiker mit Furigana
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オリンポスのかじつ
オリンポスの果実
田中 英光
Lesen Sie オリンポスの果実 (オリンポスのかじつ) von 田中 英光 (たなかひでみつ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 75.277 Zeichen · 147 Bildschirme
話をしているうちに偶然、そのお嬢さんがぼくの育った鎌倉の稲村ヶ崎につい昨年迄、おられたことが解り、二人の間に、七里ヶ浜や極楽寺辺りの景色や土地の人の噂などがはずみ、ぼくは浮々と愉しかったのです。その内に始まった饗応の演芸が、いかにも亜米利加三界まで流れてきたという感じの浪花節で、虎髭を生した語り手が苦しそうに見えるまで面を歪めて水戸黄門様の声を絞りだすのに、御祖母様は顔を顰め、「妾はどうしても、浪花節は煩さいばかりで嫌いですよ」といわれる。お嬢さんとの会話で気が浮立っていたぼくは、また尾鰭について出しゃばり、浪花節を下品だとけなしてから、子供の頃より好きだった歌舞伎を熱心に賞めると、しとやかに坐っていた奥さんが、さも感に堪えたと言わぬばかりに、「そのお若さでお芝居がお好きとはお珍しい。御感心ですこと」とお世辞を言ってくれるので、ぼくは一層、有頂天になるのでした。お嬢さんはN女子大の国文科を出たとかで、芝居の話も詳しく、知ったか振りをしたぼくが南北、五瓶、正三、治助などという昔の作者達の比較論をするのに、上手な合槌を打ってくれ、ぼくは今夜は正に自分の独擅場だなと得意な気がして、たまらなく嬉しかったのです。