Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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オリンポスのかじつ

オリンポスの果実

田中 英光

Lesen Sie オリンポスの果実 (オリンポスのかじつ) von 田中 英光 (たなかひでみつ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 75.277 Zeichen · 147 Bildschirme

Aozora Bunko

三

明朝、出発のときは、ブレザァコオトをきて颯爽と出て来るように言って下さい。なアに、学生服で、あちらに行ったって、差支えないでしょう、と言い置いてくれた由。兄は、その頃、すでに、共産党のシンパサイザァだったらしいのですから、ぼくや母の杞憂は、てんで茶化していたようでしたが、さすがに、一人の弟の晴衣とて心配してくれたとみえます。母といい、兄といい肉親の愛情のまえでは、ひとことの文句も言えません。

服は仮縫いなしに、ユニホォムと同色同型のものを、出帆の時刻までに、間に合してくれることになりましたが、やはり出来てきたのは少し違うので、ぼくはこの為、旅行中、背広に関しては、いつも顔を赤らめねばなりませんでした。

三

出発の朝、ぼくは向島の古本屋で、啄木歌集『悲しき玩具』を買い、その扉紙に、『はろばろと海を渡りて、亜米利加へ、ゆく朝。墨田の辺りにて求む』と書きました。

それから、合宿で、恒例のテキにカツを食い、一杯の冷酒に征途をことほいだ後、晴れのブレザァコオトも嬉しく、ほてるような気持で、旅立ったのです。

あとは、御承知のようなコオスで、大洋丸まで辿りつきました。