Japanische Klassiker mit Furigana
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オリンポスのかじつ
オリンポスの果実
田中 英光
Lesen Sie オリンポスの果実 (オリンポスのかじつ) von 田中 英光 (たなかひでみつ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 75.277 Zeichen · 147 Bildschirme
六
とあなたは、悪戯ッ児のように、くるくる動く黒眼勝の、睫の長い瞳を、輝かせ、靨をよせて頬笑むと、袂を翻えし、かるく手拍子を打って『土佐は良いとこ、南を受けて、薩摩颪がそよそよと』と小声で歌いながら、ゆっくり、踊りだしました。
ぼくが可笑しがって、吹出すと、あなたも声を立てて、笑いながら、『土佐の高知の、播磨屋橋で、坊さん、簪、買うをみた』と裾をひるがえし、活溌に、踊りだしました。文句の面白さもあって、踊るひと、観るひと共に、大笑い、天地も、為に笑った、と言いたいのですが、これは白光浄土とも呼びたいくらい、荘厳な月夜でした。
しかし、その月光の園の一刻は、長かったようで、直ぐ終ってしまいました。それは、あなたの友達の内田さんが、船室の蔭から、ひょッこり姿を、現わしたからです。内田さんも、あなたの様子にニコニコ笑って来るし、ぼく達も、笑って迎えましたが、ぼくにとっては月の光りも、一時に、色褪せた気持でした。
六
それから、三人揃って、芝居を見に行きました。なにをやっていたか、もう忘れています。多分、碌々、見ていなかったのでしょう。ぼくは別れて、後ろの席から、あなたの、お下げ髪と、内田さんの赤いベレエ帽が、時々、動くのを見ていたことだけ憶えています。