Japanische Klassiker mit Furigana
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オリンポスのかじつ
オリンポスの果実
田中 英光
Lesen Sie オリンポスの果実 (オリンポスのかじつ) von 田中 英光 (たなかひでみつ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 75.277 Zeichen · 147 Bildschirme
みよ、この時、髣髴と迫ってくるものは、水天青一色、からりと晴れ、さわやかに碧い、みじんも湿りッ気を含まぬ、おおらかな空気のなかに、真ッ白い国が浮びあがってくる。夢のような美しさだ。夢がこれほど実感を伴って、みえたことはないというのは、オリムピックを通じての感想ではありましたが、それをこの時ほど、如実に感じたことはありません。
白い国! 蜃気楼もかくや、――など陳腐な形容ですが、事実、ぼくは蜃気楼をみた想いでした。背後には、青空をくっきりと劃した、峰々の紫紺の山肌、手前には、油のようにとろりと静かな港の水、その間に、整然とたち並んだ、白いビルディング、ビルディング、ビルディング。それがいかにも、摩天楼という名にふさわしく、空も山も、為にちいさくみえる豪華さです。その頭上に、七月の太陽が、カアッと一面に反射して、すべては絢爛と光り輝き、明るさと眩しさに息づいているのです。ぼく達の大洋丸は、悠々と、海を圧して、碇泊中の汽船、軍艦の間を縫い、白い鴎に守られつつ、進んで行きます。
しかし、実のところ、ぼくは鴎も船も港も山も、なに一つ覚えてはおりません。只、青い海に浮んだ白い大都市が、燦然と、迫ってきた、あの感じが、いつもぼくに、ある永劫のものへの旅を誘います。