Japanische Klassiker mit Furigana
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オリンポスのかじつ
オリンポスの果実
田中 英光
Lesen Sie オリンポスの果実 (オリンポスのかじつ) von 田中 英光 (たなかひでみつ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 75.277 Zeichen · 147 Bildschirme
金徳一は、知る人ぞ知る、先のバンタム級の世界ベストテンに数えられた名選手でした。リングでの負傷が祟って落ち目が続き、帰国の旅費もないとやら。ぼくは、絢爛たる、あの行進の最中、彼の幻が、暗示するものを、打消すことが出来なかったのです。
桑港の夜、船から降りたった波止場の端れに、ガアドがあって、その上に、冷たく懸っていた、小さく、まん円い月も忘れられません。斜め下には、教会堂の尖塔も鋭く、空に、つき刺さって、この通俗的な抒情画を、更に、完璧なものにしていました。
月の色が、どこで、どんなときにみても、変らないというのは、人間にとって、甚だもの悲しいことです。
黄色タクシイの運転手に、インチキ英語を使って、とんでもない支那街に、連れこまれたことも、市場通りで、一本五十仙也の赤ネクタイを買ったことも、今は懐しい思い出のひとつです。
しかし、その夜、フォックス劇場できいた『君が代』の荘厳さは、なお耳底にのこる、深刻なものがありました。シュウマンハインクとかいう、とても肥ったお婆さんで、世界的な歌手が、我々が入場して行くと、日の丸の旗と、星条旗を両手に持ち、歌ってくれたのです。