Japanische Klassiker mit Furigana
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パノラマとうきだん
パノラマ島綺譚
江戸川 乱歩
Lesen Sie パノラマ島綺譚 (パノラマとうきだん) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 78.920 Zeichen · 153 Bildschirme
犯罪の恐怖がある水準を超えると、丁度耳に栓をした時の様に、ツーンとあらゆる物音が聞えなくなって、謂わば良心が聾になって了って、その代りには、悪に関する理智が、とぎすました剃刀の様に、異常に鋭くなり、まるで人間業ではなく、精密なる機械仕掛でもあるかと思われる程、どの様な微細な点も見逃すことなく、水の如く冷静に、沈着に、思うままを行うことが出来るのでありました。
彼が今、菰田源三郎の腐りかかった死体に触れた刹那、その恐怖が極点に達すると、都合よくも、又この不感状態が彼を襲ったのでした。彼はもう何の躊躇する所もなく、機械人形の様に無神経に、微塵の手抜りもない正確さで、次々と彼の計画を実行して行きました。
彼は、持ち上げても持ち上げても、五本の指の間から、ズルズルとくずれ落ちて行く、菰田の死体を、一文菓子屋のお婆さんが、水の中から心太を持ち上げる様な気持で、なるべく死体を傷つけぬ様に注意しながら、やっと墓穴の外へ持ち出しました。でも、その仕事を終った時には、死体の薄皮が、まるでくらげ製の手袋の様に、ピッタリと彼の両の掌に密着して、振り落しても、振り落しても、容易に離れ様とはしないのです。