Japanische Klassiker mit Furigana
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うえすぎけんしん
上杉謙信
吉川 英治
Lesen Sie 上杉謙信 (うえすぎけんしん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.102 Zeichen · 256 Bildschirme
鎧える親
外の杉木立は轟々と空に吠え、落葉の声が、霧を捲く。風がこの家を馳けめぐる物音の中には、明らかに兵の跫音も交じっていた。
ここの家族たちが逃げ出す時、開け放して行ったのだろう。縁の雨戸も除かれ、台所の戸は仆れていた。――その暗い水瓶のあるあたりに、ぬっと巨大な人影がうごいた。そして、がたがたと、音をさせていたかと思うと、そこから手桶を捜し出して、すぐ裏の井戸の側へ寄って行った者がある。
ざあと釣瓶をあけて、手桶へ水を汲み入れていた。その巨大に見える鎧武者の影である。
「あっ。お父上っ。お父上ではございませんかっ……」
鶴菜は、絶叫した。
釣瓶の竿を握ったまま、鉢金の兜、薄金の面頬に、ほとんど眼と鼻だけしか現わしていない武者の顔は、屋内を振向いて、ややしばらく鶴菜の影を凝視していた。
鎧える親
武者は、唖か聾のように、何の反応もあらわさない。釣瓶を離した。その手に水桶を提げた。もう黙然と先へ歩いてゆく。
「……もしっ!」
彼女は、縁を駈け下りた。というよりも転げ落ちた。
とたんに、足の腫も痛みも彼女になかった。水桶を提げて杉木立の小道を彼方へ行く、武者に追いすがって、