Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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なんぽうゆうしん

南方郵信

中村 地平

Lesen Sie 南方郵信 (なんぽうゆうしん) von 中村 地平 (なかむらちへい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.899 Zeichen · 42 Bildschirme

Aozora Bunko

埃っぽい田圃径へと通り抜けてゆく。

規則正しい、高いトヨの蹄の音が、静かな部落に響きわたると、往来に呆んやり佇んでいたお主婦さんや、野良径を忙しげに往き来していた百姓たちは、驚いたように径をゆずって馬上をふり仰ぐ。

そして、丁寧に挨拶する。

「へい、旦那さん、こんにちは。いい御散歩で」

それまで旦那は、大抵は半ば眠ったように、呆んやりと夢見心地になっている。しかし、とたんにかっと大きな眼を見ひらく。そして、一丁も先から相手の姿を心にかけていたような、愛想のいい受け答えをするのが常である。

「へい、こんにちは。まめで結構じゃの」

旦那は自分を非常にやり手な事業家であると、信じこんでいる。だから、他人をやり過したあと、そういう受け答えに抜け眼のない自分の性格に満足して、思わず会心の微笑を洩す。しかし、その微笑が消えるか、消えないうちに、再びうつらうつらと夢見心地に入ってしまうのである。

そういう旦那も、暗い杉林をくぐり抜け、長さ二間ばかりの土橋の上まで来ると、はっとしたように眼を醒ます。香ばしい黒土の匂いや、むんむんとする菜種の花の匂いが、息もつまる位おしよせてくるからである。