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Japanische Klassiker mit Furigana

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なんぽうゆうしん

南方郵信

中村 地平

Lesen Sie 南方郵信 (なんぽうゆうしん) von 中村 地平 (なかむらちへい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.899 Zeichen · 42 Bildschirme

Aozora Bunko

見わたすかぎり田圃に、黄色い花が霞のように咲き揃っているのに気がつくと、トヨも突然気がたってきたように、たちどまる。そして、長い脛を踏み交わし、首をあげ、歯をむきだして高くいななくのが普通である。

手綱が急に重たくなり、体が引き戻されると、源吉爺さんはいつもトヨが、昔草競馬で一等をとっていた頃のことを思いだす。その頃、トヨはまだ若く、華やかで、毛並は美しく艶があり、体も弾力に富んでいた。そして、黄と赤とのだんだらの縞がある、メリヤスのシャツを着こんでいた、乗り手の源吉爺さんを手こずらしたものであった。

「あの頃は、わしもまだ血気の美青年で、村の娘ん子たちに騒がれたもんじゃったが……。この頃のように欲念が薄うなっては人間も早や死物同然じゃ」

爺さんは思わず大きな溜息をつく。

菜の花畑で草を伐っている百姓たちは、蹄の音に気がつくと、花の間からむくむくと背のびして、馬上をふり仰ぐ。そして例の決りきった挨拶を旦那との間に取り交わす。しかし、蹄の音がまだ消えるか、消えないうちに、たちまち屈託のない、野放図な百姓たちの笑い声が、賑かに雲のように湧きあがる。

「あのなあ、旦那の鼻はな……」