Japanische Klassiker mit Furigana
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よせ
圓太郎馬車 正岡容寄席小説集
正岡 容
Lesen Sie 圓太郎馬車 正岡容寄席小説集 (よせ) von 正岡 容 (まさおかいるる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 147.226 Zeichen · 295 Bildschirme
そうして、
「麦やん……」
と呼びかけようとしたら、
「いや、そちらから、お話がのうても、今日あたり、こちらから、ボチボチ去なせていただこう、思うとりました」
相変らずの物憂げな調子だった。
ア、ひどい奴だ。
今日ドロンする気でいやがったんだ、こいつも。
思わず今松は、海老団治と顔を見合わせた。
そのとき麦松は、黙々と例の汚い茶色の風呂敷をひろげはじめた。
なかには時計の修繕に用いるヤットコのような、錐のような、釘抜きのような機械が二個三個入っていて、なんとその下に十円紙幣が百枚ちかくも重なっていた。
時計の内職でたいそうお金を溜めているとは聞いていたけれど、こんなに持っていようとは思わなかった。
今松は目を丸くした。
なに思ったか麦松は、いきなりその紙幣のなかから勘定して十円紙幣六枚だけ取り出し、
「あの、これを――」
と海老団治のほうへツーと差し出した。
ハッと今松は気が呑まれた、ときがときだけに。
ここにいる三人へ、二十円ずつ使ってくれと言うのか、麦松。
ケチだケチだと言われながらも、イザこのような場合には案外こんな気性をも持ち合わせていたのか、麦松。