Japanische Klassiker mit Furigana
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なつむしあんどん
夏虫行燈
吉川 英治
Lesen Sie 夏虫行燈 (なつむしあんどん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.200 Zeichen · 37 Bildschirme
荒川づたい
一
荒川づたい
一
『何うしたのであろう?』
立会の者の控え部屋では、当夜の検死を初め、役人たちが、顔を見合せていた。
『もう、九刻に近かろうが……』
『平四郎も戻らぬし』
『水装束もまだ届かぬというが』
云っている間に、その九刻は、髪切虫の啼く音のように、時計の間からギリギリと聞えた。
『いつ迄、待っても居られまい。――死罪の者に対して、猶予を与えなどしては、江戸表への御報告も偽りになる』
当夜の立会人のひとり――城番加役宮崎若狭守の子息市之丞がそう云って、真っ先に、執行に立った。
それに伴れられて、
『では、折角の望みだが、水装束も間にあわぬな』
『小袖はよいが、介錯は誰がいたすな』
などと口々に呟きながら、時刻と、市之丞の言葉に促されて皆、起ち上った。
『平四郎の戻りが間にあわねば、ぜひもない、介錯はそれがしがする』
この中では、市之丞が若かった。――で当然の意気らしく、それは響いた。
然し、御城番の次席である若狭守の次男なので、家柄としては、この中の誰よりも高い。それを老人達は、やや憚かって、
『いや、市之丞様のお手を煩わさぬ迄も、誰か、居らぬ事はござりますまい。