Japanische Klassiker mit Furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.902 Zeichen · 22 Bildschirme
左京が恐る恐る訊くと、
「其方の彫物の出来上るのを待っていたよ――これじゃ見てくれ、手本になったのは小浪だが、半四郎に似ているという噂じゃ」
平民殿様はすっかり悦に入って、手筥の中から、大錦一枚刷の八百屋お七――国広えがく――と署名のあるのを出して見せました。
「ハッ」
恐る恐る押し戴いた六郷左京は、それを一と眼、ハッと首を垂れました。
髪を振り乱して、櫓に駈け登る人形振りのお七、激情に取り逆せて、見るも凄まじい美しさは、これが勢州亀山六万石の殿様の隠し芸かと思うと「鑿を取っては」の誇りに充ち満ちた、六郷左京の自慢の角をへし折ります。
「恐れ入りました、到底私の彫物の及ぶところでは御座いません」
そう言う左京へ、
「芸道と君臣の礼は又別だ、無用な謙遜ではないか、左京、兎も角其方の作を見よう」
日向守は砕けた殿様でした。
「ハッ」
不本意乍ら、左京の作品――八百屋お七の彫物は縁側に運び込まれました。
覆いの白い布を除ると、春の陽を半身に浴びて、縁側にすっくと立った八百屋お七等身の像、赤い襦袢、鹿の子の帯、日向守の描いた絵と一対の姿態ですが、これは又なんとした、無力で冷たくて精彩のないお七でしょう。