Japanische Klassiker mit Furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.902 Zeichen · 22 Bildschirme
こんな筈ではなかったが――、と六郷左京は幾度か首を捻りました。が、矢張りいけません。このモデルは存分に美しく、非の打ちどころがないくせに、たった一つ、大事な情愛――恋のために、江戸の一角を灰にして、鈴ヶ森で礫刑になった、八百屋お七の激情に似たものを持っていなかったのです。
多与里は一日一杯、殆んど瞬きもせずに、いやどうかすると、呼吸もせずに、モデル台の上に立っているようでした。その嗜みと辛抱とは、人間離れのしたものであればあるほど、六郷左京の不満は煮えくり返ります。
「何ということだ、これではまるで泥人形ではないか」
そんなことをいい乍らも、六郷左京の鑿は、職業的な速力で、一日一日と彫像の形を整えて行きます。やがて一と通りの彫りが出来、磨きをかけて、彩色に取りかかったのは三月になってから、その頃になると絵の具も凍らず、仕事は思いの外早く進みます。
「これで良し」
出来上ったのは、もう桜の散る頃、何よりもまず衣服を改めて殿に御目通りを願うと、
「出来上った相だな――まずは目出度い、さぞ見事なものであろうな」
日向守はことの外の機嫌です。
「殿、御絵の方は?」