Japanische Klassiker mit Furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.739 Zeichen · 23 Bildschirme
四
故意か、偶然か、それはわかりません。お染の年齢から言えば、それは偶然でなければならず、お染のその後の身持から言えば、それは故意かもわかりませんが、兎も角金三郎は、――金三郎自身の言葉を借りて言えば、追われた兎のように、梯子段を飛降り、玄関の戸を開け、雨に濡れた駅前の道を、真っ直ぐに構内の列車に飛込み、自分の席にどっかと坐って、サメサメと泣いたというのです。
何んのために泣いたか、それは金三郎にもわかりません。兎も角五体に痙攣する、恐ろしい動乱に悩まされ乍ら、一晩まんじりともせずに明かしたことだけは確かで、翌る日、宿屋から列車の中へ、お染が金三郎を捜しに来た時は、困憊し切った身体を、木の固い椅子に横たえて、気抜けのしたように、まじりまじりと客車の天井を眺めて居たということでした。
四
藤波金三郎は、それから間もなくブラジルに渡りました。小牛田で不思議な一夜を明かした後、翌日は何うやら上野まで辿り着いて、お染を牛込の親類の家に送り届けた金三郎は、その晩真砂町の富士見軒で、友人五六人の催した送別会に臨み、翌々日は横浜から南米行の汽船に乗込んだのです。
話の真実性のために、当時真砂町に富士見軒という小さい西洋料理屋のあったことや、その送別会に、白線の帽子を冠って、私も列席したことなどを附け加えて置きましょう。