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Japanische Klassiker mit Furigana

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きだんクラブ〔せんごばん〕

奇談クラブ〔戦後版〕

野村 胡堂

Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.161 Zeichen · 26 Bildschirme

Aozora Bunko

三

一年間だけ――たった一年だけ待って下されば、それだけの富が全部貴女の手に入って来るのです」

そう言い出したのは、鈴子の再婚の相手と思われている森川森之助でした。

「その通り、――森川さんの言われる通りです、たった一年間だけ辛抱していらっしゃれば」

佐瀬弁護士でした。

「辛抱? ――私にはそんなことが――」

鈴子はそれを、夫の無用な嫉妬と解釈したのでしょう。一千万円の遺産を餌にして、一年間未亡人生活を強いられるのは、鈴子にとっては、たまらない屈辱だったのです。

「それは解釈のしようですよ、鈴子さん、この遺産を辞退すると、世間では貴女を何んと見るでしょう」

「?」

森川森之助は一生懸命でした。

「かえって再婚を急いでいるといった、悪評を立てられはしませんか。遺言状は貴女を拘束したと解釈せずに、貴女が自由意志で一年間再婚をなさらなければ、それでいいわけではありませんか」

森川森之助のこの考え方は、如何にも実際家らしい、妥協的ではあるが無事なものでした。鈴子夫人もそれ以上争う意志が無かったらしく、そのまま承服したことは申す迄もありません。

三

一年経ちました。

鈴子夫人の美しさは次第に回復しますが、国府金弥老人の変った遺言のことが、何処からともなく世上に漏れて、老人に対する世評はまことに滅茶滅茶です。