Japanische Klassiker mit Furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.161 Zeichen · 26 Bildschirme
河馬のように醜く、河馬のように食い肥った六十歳の老人が、二十五歳の世にも美しい女流詩人を、金の力で配偶にし、自分の死水を取らせたのさえ、世の常識を蹂躙した怪しからぬしわざなのに、自分の死後にまで干渉の手を伸ばして、美しい鈴子夫人に一年間の孤閨を守らせるとは、何たる醜い嫉妬ぞや――というのです。
老人の嫉妬の醜さは、あらゆるサロンに、新聞に、雑誌に、恰好のゴシップを提供しました。それはアラビアン・ナイトの悪魔の嫉妬に譬えられ、オセロの嫉妬に比べられて、笑いと軽蔑と、そしてよき戒めとさえなったのです。すべての若くて美しい夫人を持った老人達まで、そのために暫くは反省させられ、寛大にさえなりました。
その一方では、鈴子未亡人と森川森之助は、堰かれた二つの水のように、急速に接近し始めて、離れ難いものになって行く様子でした。森川森之助は殆ど毎日、外国映画に出て来る恋人のように、花束か何んかを持って、今は主人を喪った国府家を、何んの遠慮もなく訪問しました。
時には豪勢な応接間で、時には鈴子夫人の私室で、或時にはピアノを弾き、或時は詩を唱和して若い恋人同志のように、二人は一年という歳月の経つのを待ちました。