Japanische Klassiker mit Furigana
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おくさんのいえで
奥さんの家出
国枝 史郎
Lesen Sie 奥さんの家出 (おくさんのいえで) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.851 Zeichen · 28 Bildschirme
私もお嬢さんも黙っていた。で、ひっそりと静である。
何時まで続く静けさであろう?
しかし二人とも黙っていた。
だが何うしたら可いのだろう?
お嬢さんの綺麗な細っこい、その癖その割に力のある、一本の腕が緩く廻わり、私の肩の一方へかかり、私の全身を身近く引き寄せ、そうして一方別の手で私の頬を野蛮に抑え、ねじ向けようとしているのを。
いよいよ危機は迫ったらしい。
「引っこ抜くかな、引っこ抜くかな」
落ちかかろうとするのであった。そのお嬢さんの接吻なるものが。
ねじ向けられようとしているのであった。私の顔が東の方へ。
だから何うしても利器を抜いて、彼女と彼女の仲間との、姦策なるものを防ぐことによって、私の方が勝たなければならない。
無難に然うして滑らかに、私の試は成功した。
利器――書籍さ! 何んでもありゃァしない。最近私が発行した、○○という創作集なのさ、それを懐中から取り出して、私自身の顔へ宛て、好んで東へ顔を向け、そうして創作集の裏側で爆発するように笑ったまでである。
思う通りの結果となった。
手近の東の方角にある、外濠稲荷の木立の中から、
「おや、何んだ!」