Japanische Klassiker mit Furigana
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ようねんじだい
幼年時代・晩夏
堀 辰雄
Lesen Sie 幼年時代・晩夏 (ようねんじだい) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 85.965 Zeichen · 169 Bildschirme
三
の一つとしてやれるだけのことはやってみようと考えたのだった。
「幼年時代」はそうして書きはじめたものなのである。
夏が過ぎ、秋になっても、私たちはまだ山で暮らしていた。冬が近づいて来る頃になって、私たちは慌てて山を引きあげ、逗子にある或友人の小さな別荘にしばらく落ちつくことになった。そんな仮住みから仮住みへと、私は他の仕事と一しょにいつも「幼年時代」を持ち歩いていた。
父のほうは、秋になってよくなり出すと、ずんずん快くなった。小春日和の日などには、看護の人に手をひいて貰って、吾妻橋まで歩いていったという便りなどが来た。それほど快くなりかけていた父が、二度目の発作を起したのは十二月のなかばだった。電報をみて、私たちが逗子から駈けつけてきたときはもう夜中だった。父は深く昏睡したまま、まだ息はあったけれど、今度は私たちもあきらめなければならなかった。……
三
父の死後、私ははじめて自分の実父がほかにあって、まだ私の小さいときに亡くなったのだということを聞かされた。それを私に聞かせてくれたのは、田端のおばさん、すなわち私の母のいもうとの一人で、震災まえまでは私たちのうちのすぐ隣りに住みついていたおばさんである。