Japanische Klassiker mit Furigana
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ようねんじだい
幼年時代・晩夏
堀 辰雄
Lesen Sie 幼年時代・晩夏 (ようねんじだい) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 85.965 Zeichen · 169 Bildschirme
目を患っているおじさんにはもうそれさえよく見えないでいるらしかった。しかし、おじさんは、花林の卓のまえに向ったまま、思いのほか、上機嫌そうに答えた。
「うん、雪の下もそうなるときれいだろう。」
「……」私は黙っておじさんの顔のうえから再び雪の下のほうへ目をやっていた。
そのときおばさんがお茶を淹れて持ってきた。そしてあらためて私に無沙汰の詫びやら、手みやげのお礼などいい出した。無口なおじさんも急にいずまいを改めた。そこで私もあらためて、はじめておじさんのこの頃の容態を、むしろそのおばさんの方に向って問うのだった。
私が自分の生い立ちの一伍一什をこと細かに聞いたのは、それからずっと夕方になるまでで、雪の下の咲いたやつがその間じゅう私の目さきにちらちらしていた。おばさんが殆んどひとりで話し手になっていたが、無口なおじさんもときどきそれへ短い言葉をさんだ。……
私はそれまで、誰れにもはっきりそうと聞かせられていたわけではなかったが、いつからともなく自分勝手に、自分が上条のうちの一人息子だのに小さいときから堀の跡目をついでいるのは、何か私の生れたころの事情でそうされたのだろう位にしか考えていなかった。