Japanische Klassiker mit Furigana
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ようねんじだい
幼年時代・晩夏
堀 辰雄
Lesen Sie 幼年時代・晩夏 (ようねんじだい) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 85.965 Zeichen · 169 Bildschirme
私が去年結婚して信州に出立した後、おばさんが或日向島の家にたずねてゆくと、父はたいへん上機嫌で、二人の間にはいろいろ私の小さいときからの話などがとりかわされたそうであるが、その折にも、真実の父がほかにあることをこの年になるまで知らずにいる私のことを、「あいつもかわいそうといえば、かわいそうだが、まあ自分にはこんなにうれしいことはない。……」といって、それから「どうか自分の死ぬまで何んにも知らせないでおいて下さい。」と何度もおばさんに頼んだそうだった。父の病に仆れたのは、それから数日立つか立たないうちだったのである。……
私がそれまで名義上の父だとばかりおもっていた、堀浜之助というのが、私の生みの親だったのである。
広島藩の士族で、小さいときには殿様の近習小姓をも勤めていたことのある人だそうである。維新後、上京して、裁判所に出ていた。書記の監督のようなことをしていたらしい。浜之助には、国もとから連れてきた妻があった。しかし、その妻は病身で、二人の間には子もなくて、淋しい夫婦なかだった。
そういう年も身分もちがうその浜之助という人に、江戸の落ちぶれた町家の娘であった私の母がどうして知られるようになり、そしてそこにどういう縁が結ばれて私というものが生れるようになったか、そういう点はまだ私はなんにも知らないの