Japanische Klassiker mit Furigana
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ようねんじだい
幼年時代・晩夏
堀 辰雄
Lesen Sie 幼年時代・晩夏 (ようねんじだい) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 85.965 Zeichen · 169 Bildschirme
……
いま思うと私の生れたのは麹町平河町だというから、あれはきっと三宅坂と赤坂見附との間ぐらいの見当になるだろう。そうとすると、私の生父の墓は青山か千駄ヶ谷あたりにあるのだろう。誰れにきいたらいいかしらと思って、私はふと麻布で茶の湯の師匠をしていたおばさんがもうかなりのお年でまだ存命していられるらしいのを思い出した。そうだ、あのおばさんだけがいまでは私の生父にゆかりのあるただ一人のかたなのだ。なんでもほんとうの妹ごだとか。私はいままで何んにも知らなかったので、ついそのおばさんにはよそよそしくばかりしていたが、そのうちに是非ともお訪ねしてみたいものだ。……
いかにも場末らしく薄汚い請地駅で、ながいこと浅草行の電車を待ちながら、私はそんなことを一人で考え続けていた。
註一 私の生父の墓のある寺のことは田端のおばさんもよく覚えていなかった。なんでも河内山宗春の墓があるので有名なお寺だとか云うことを知っているだけで、一度も其処には往ったことがないそうだ。その後、私は麻布のおばさんのところにお訪ねしようとときおり思いながら、なかなか往かれないでいるうちに、その年老いたおばさんが突然亡くなられてしまわれた。