Japanische Klassiker mit Furigana
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ようねんじだい
幼年時代・晩夏
堀 辰雄
Lesen Sie 幼年時代・晩夏 (ようねんじだい) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 85.965 Zeichen · 169 Bildschirme
しまいには殆ど走るようにして行った。そうしたらやっとのことでおばさんの家が見え出した。その垣根の中では、おばあさんが丁度干し物を取り込んでいた。
おばあさんは私が一人なのを見ると、びっくりして飛んできた。「まあどうしたんだい、一人でなんぞ……」そういわれると、私はもう何も言わない先きから、わあと声をあげて泣き出した。ただ自分の兵児帯にぶらさげたその迷子札をしきりに引っ張っておばあさんに教えながら……
そんな仲好しのおばあさんが居なくなって、茶の間で忙しそうにしている母にうるさくまつわりついては一人でぐずぐず言っているような時など、
「坊や、一しょに散歩に行こう。」と父が言ってくれた。
「あんまり遠くへはいらっしゃらないで。」母はいつも心配そうに言うのだった。
私は父と出かけることも好きだった。しかし、父は先ず、曳舟通りなんぞにある護謨会社や石鹸工場のなかへ私を連れてはいり、しばらく用談をしている間、私を事務所の入口に一人で待たせておいた。その間、私はすぐ目の前の工場の中できいきいと今にも歯の浮きそうな位軋っている機械の音だの、汗みどろになって大きな荷を運んでいる人々だの、或事務所の入口近くにいつも出来ている水溜りの中に石油が虹のようにぎらぎら光っているのなどを、いかにも不安そうに、じっと何か怺えている様子で