Japanische Klassiker mit Furigana
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ようねんじだい
幼年時代・晩夏
堀 辰雄
Lesen Sie 幼年時代・晩夏 (ようねんじだい) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 85.965 Zeichen · 169 Bildschirme
朴の咲く頃
一
あたりはしいんとしていて、ときおり谷のもっと奥から山椒喰のかすかな啼き声が絶え絶えに聞えて来るばかりだった。そんな谷あいの山かげに、他の雑木に雑って、何んの木だか、目立って大きな葉を簇がらせた一本の丈高い木が、その枝ごとに、白く赫かしい花を一輪々々ぽっかりと咲かせていた。……
それは今年の夏になろうとする頃で、私と妻は、この村にはじめて来た画家の深沢さんを案内しながら、近所の林のなかを歩き廻った挙句、その林の奥深くにある大きな樅の木かげの別荘(そこで私達はおととし結婚したばかりのとき半年ほど暮らしていたのだった……)の前を通って、そのもっと奥にある村の水源地まで上って行ったときのことであった。その村を一目に見下ろすことの出来る頂上で少し遊んだ後、こんどはすぐ裏側の谷へ抜け、殆ど水が涸れて河床の露出した谷川に沿いながら、村の方へ下りて来た。雑木林はなかなか尽きそうで尽きなかった。漸くその雑木林の中に見おぼえのある一軒の別荘が見え出した。私達は去年の落葉の溜まったその張出縁を借りて一休みして行くことにした。
女の画家らしく草花などを描くことの好きな深沢さんは、ひとり離れて縁先に腰を下ろしながら、道ばたで写生して来たさまざまな花の絵に軽く絵具をなすっていたがそれを一とおりすますと、絵具函を