Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ようねんじだい

幼年時代・晩夏

堀 辰雄

Lesen Sie 幼年時代・晩夏 (ようねんじだい) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 85.965 Zeichen · 169 Bildschirme

Aozora Bunko

そうして一度無性に怯え出してしまうと、幼い私のなかの、大人の恐怖は、もう私一人だけでは手に負えなかった。

一方、いままではちゃんと間を隔いて鳴っていた近所の半鐘の方も、そのとき突然自分の立てつづけている音に怯え出しでもしたかのように、急に物狂おしく鳴り出していた。

それを聞いて一層私が怯えるので、最初は父は溝の多い路地を抜けたところまで私達に附添ってくる積りだったのに、とうとう母と、佐吉に背負われた私とについて、全く水の無くなる土手上まで来なければならなかった。土手の上は、私達のような避難者で一ぱいだった。父は大川端へ行って、狂おしいように流れている水の様子を眺めてから、再び一人で水漬いた家々の方へ引っ返していった。

私達は、その土手の混雑のなかで、同じように女子供だけで何処かへ避難しようとしているお竜ちゃんの一家のものにひょっくり出会った。本当にひさしぶりでまともに顔を見合わせたお竜ちゃんと私とは、そういう思いがけない邂逅に、思わず二人ともにっこりともしないで、怒ったように真面目に見つめ合った。母たち同志が二言三言立ち話をし合っている間、水の中を自分で歩いてきたらしいお竜ちゃんは、佐吉におぶさっている私の傍にきて、そんな恰好をしているところを見られて一人で羞しがっている私を、しかし何とも思わないように