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Japanische Klassiker mit Furigana

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おもいだすことなど

思い出す事など

夏目 漱石

Lesen Sie 思い出す事など (おもいだすことなど) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 57.003 Zeichen · 113 Bildschirme

Aozora Bunko

二十一

床の下に水が廻って、自然と畳が浮き出すように、余の心は己の宿る身体と共に、蒲団から浮き上がった。より適当に云えば、腰と肩と頭に触れる堅い蒲団がどこかへ行ってしまったのに、心と身体は元の位置に安く漂っていた。発作前に起るドストイェフスキーの歓喜は、瞬刻のために十年もしくは終生の命を賭しても然るべき性質のものとか聞いている。余のそれはさように強烈のものではなかった。むしろ恍惚として幽かな趣を生活面の全部に軽くかつ深く印し去ったのみであった。したがって余にはドストイェフスキーの受けたような憂欝性の反動が来なかった。余は朝からしばしばこの状態に入った。午過にもよくこの蕩漾を味った。そうして覚めたときはいつでもその楽しい記憶を抱いて幸福の記念としたくらいであった。

ドストイェフスキーの享け得た境界は、生理上彼の病のまさに至らんとする予言である。生を半に薄めた余の興致は、単に貧血の結果であったらしい。

仰臥人如唖。 黙然見大空。

大空雲不動。 終日杳相同。

二十一

同じドストイェフスキーもまた死の門口まで引き摺られながら、辛うじて後戻りをする事のできた幸福な人である。