Japanische Klassiker mit Furigana
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きょうふおう
恐怖王
江戸川 乱歩
Lesen Sie 恐怖王 (きょうふおう) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 66.038 Zeichen · 133 Bildschirme
仕方がないので、階下に飛んで降りて、女中に警察と附近の医者へ電話をかけさせて置いて、又元の二階へ取って返した。こんな時に書生がいてくれれば助かるのだが、それも此頃丁度不在なのだ。
ゴリラよりも気がかりなのは夏子のことだ。手傷を受けた丈けならいいが、もしや殺されてしまったのではあるまいか。
夏子は部屋の片隅にもみくちゃになって倒れていた。調べて見ると、息も絶え脈もなくなっていた。喉をしめられた跡が紫色にふくれ上っている。右頬を喰いつかれたと見え、ザックリ肉が開いて、顔中が紅酸漿の様に真赤だ。素人目にも到底蘇生の見込はない。
ゴリラ男が云い残して行ったテーブルの上を見ると、そこに実に奇妙な品々を発見して、蘭堂は愕然とした。
一着の古い黒の背広服、黒天鵞絨のソフト帽、その横に白紙をのべて、上に黒眼鏡と、長髪の鬘と、つけ髭が並べてある。
その側に、数枚の手紙の様なものが、キチンと重ねて、叮嚀に紙ナイフが重しにのせてある。
蘭堂は、悪夢の続きでも見ている様な気がした。この服、この帽子、この眼鏡、凡て黒瀬と名乗った怪画家のものではないか。ゴリラに毒薬の注射をして逃げ去った、恐怖王その人と覚しき怪人物のものではないか。