Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 190.406 Zeichen · 381 Bildschirme
「何の御用であろうな」
それは、又右衛門にも、解せぬらしい。といって、手紙の内容は、至って悠閑な消息に過ぎない。内密の用事でとか、折入ってとかいう言葉は見えなかった。
自分はきょうは一日、堀川添いの閑居へ来て終日読書している。自分の栽った菊がこの好日の下に清香を放っているが訪う人もないのを嘆じている。あなたの御都合はどうか。もしお暇だったら柴門を叩いてくれ。
――これだけの文字に過ぎないのである。けれどこれだけの用事であるはずはない。又右衛門が特に茶にたしなみが深いとか、殊勝な読書子であるとか、風雅に取柄のある漢とかいうのなら知らぬこと、わが家の門に咲いた菊さえ気がつかない。弓の塵ならすぐ目にもつけるが、菊の花などは踏んで通ってしまいそうな人なのである。
「とにかく、参ってみよう。こひ、衣装を出せ」
又右衛門は、起つ。こひと、寧子は、又右衛門の左右から、衣紋よ、袴腰よと、手を添えた。
「行ってくるぞ」
明るい秋の陽の下に立って、又右衛門はいちど我が家を振り向いた。寧子とこひが、揃って、門まで出て、見送っていてくれる。彼の心は珍しく泰平を味わった。乱世の中にもたまたまこんな日がある。