Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 190.406 Zeichen · 381 Bildschirme
「や。髪も結うのか」
「こよいは、聟の君。そのお髪ではなりますまい」
「ざっとでいい」
鏡蓋をあけて立てる。
藤吉郎は、鏡に向って、真面目な顔していた。なかなかざっとでいいこともないらしい。自分でも笄を持ち、しきりと鬢をなでたり、根を上げよとか下げよとかやかましい。
髪がすむと、庭へ出た。厨では近所の細君と下婢たちが、行水の湯をわかしている。門のほうにはまた、祝いの辞をのべに来る客の声に、ごんぞが慌てて駈け出してゆく。
「ああ、日暮もまぢかい」
白い夕星がもう桐畑の梢に見えはじめている。聟の君も、この夕は、多感であった。
今の彼は、大きな歓びの中にあった。大きな歓びに会うたびに、彼は中村の母が思い出された。そして、その歓びを共にすることのできない今を寂しく思った。
「慾をいえば限りがない。世には母の亡い人すらあるに」
独り彼はなぐさめた。別れてこそいるが、母はまだ石となっている人ではない。また、こうして別れているのも、母の心は自分をして御奉公に専念させ、自分の考えも後日の大を誓っているからである。お互いに、
――もうこれなら。
という日を待って迎えもしよう、母も息子の許へ来よう、という楽しい希望のためにであった。