Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 190.406 Zeichen · 381 Bildschirme

Aozora Bunko

隅でぽつねんと蚊を追っていた聟の君は、そうした人々の顔を思い出して、心のそこから欣しく思っていた。

聟入り、嫁娶りの故実にやかましい老人も中にはいて、

「聟どのの草履がすり切れておるではないか。古草履ではならぬ。新しい草履を召されて、嫁どのの家に着くと、先様の仕女が、すぐそれを取って奥へ持ってゆく。そしてこよいは、嫁方の舅御どのが、その草履の片方ずつを抱いてお寝やるのが古からの仕きたりじゃ。聟どのの足をこうして留めまするという足留めの式でな」

また、ひとりの老婆は、

「松明のほかに、脂燭の用意もしてありましょうな。裸火にしては持ち歩けぬゆえ、消えぬよう、明りに紙覆をかけて、嫁君のお家まで持ってゆく。そして、あちらにも脂燭の御用意がしてあるはずゆえ、御挨拶といっしょに、その灯を、あちらの物に移し、三日三晩は、消えぬよう、神棚にあかあかとぼしておくのでござりますぞ――おわかりかの。誰かよう、聟どのに従いて行く衆が覚えておいて下さらぬとなりませぬが」

と、わが子を聟にでもやるように親切である。気をもんでくれる。ただ世話ずきとのみは片づけられない。藤吉郎は、母こそ側にいなかったが、母が側にいてくれる程、何もかも任していられた。